何者にもなれないぼくたちは

日々思った事、やってることの備忘録

照明を考える

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今週のお題「お部屋自慢」


残念ながら自慢できるような部屋には住んでいない。
だが最近少しでも良い部屋にしようと、照明についてあれこれ調べたり、手を加えたりしたので、その話をしよう。

 

理想の照明

自室というのは、自分の好きにできる数少ない領域だ。
センス良くまとめようと苦心する人もいれば、利便性を追い求めて砕心する人、特に気にせずホームセンターや通販などでお手頃な家具を揃える人もいる。
ぼくは実家暮らしで、7畳ほどの部屋を下賜されている。趣味嗜好が定まっていない幼少期から今に至るまで、ライフステージに応じて家具を買い揃えていった為、センスの良さは望むべくもなく、とても自慢できるような部屋ではない。

自慢はできないながらも、最近は「心地よく過ごせる部屋」を目指して雑貨を買い足したり、家具の配置に気を使っている。
ぼくが考える「心地よく過ごせる部屋」とは、すべきこと為すべきことに追われず、何をするでもなくただ「過ごす」という行為ができる部屋だ。
それを演出する上で大きな鍵を握るのが、照明だ。

 

 

今使っているのはシーリングライト

日本ではシーリングライトという照明器具が広く使われている。
天井を見上げてほしい。そこに平べったい円盤状の照明が張り付いていれば、それがシーリングライトだ。
シーリングライト以外ではやたらと明るいペンダントライトを吊っている家も多い(祖父母の家がそうである)
ぼくの部屋も例外ではなく、天井にシーリングライトが張り付いている。

シーリングライトやペンダントライトは部屋全体を均一に照らしてくれる。
照明業界ではこういった、全体を明るく照らす主照明を「全般照明」と呼ぶらしい。
勉強や作業をする空間には良いのだが、均一に照らす為に部屋全体がのっぺりした印象になってしまい、落ち着ける部屋とは縁遠い。また日没後でも昼間のように明るいのも無機質で興ざめする。

下の写真が手を加える前の自室だ。さめざめしい。

 

 

もうひとつの照明・局部照明

「全般照明」と対をなす「局部照明」に注目してみよう
局部照明は、必要な箇所のみを照らす照明で、デスクライトやスポットライトなどが該当する。
明暗差がはっきりとしており、雰囲気のある空間を演出できる。
ものの本によれば、空間の中に明暗差があると奥行き感が生まれ、広々と感じることができる。壁を照らせば奥行きが感じられるだけでなく、部屋全体が明るく感じられる等々、魅力的なことが書かれていた。
つまりシーリングライトをやめて局部照明としてスポットライトを取り付ければ、心地よい部屋を演出できる。しかしここでも問題がある。

 

 

局部照明の問題点

局部照明を素直に取り入れれば良いかというと、それはそれで問題がある。

まず第一にシーリングライトで均一に照らす方が望ましい場面もある。
細かい作業をする時や部屋の掃除をする時はシーリングライトで煌々と照らす方が良いし、日中に明かりが欲しい時も、やはり均一に照らすシーリングライトの方が快適だ。

第二にシーリングライトと比べ、局部照明は場所を取るということだ。
無印良品のシステムライトシリーズを導入しようと思っていたが、配線ダクトを取り付けてスポットライトを取り付けるとなれば、なかなかの圧迫感がある。
天井高のある物件なら良いのだろうが、ぼくの部屋はやや低い部類に入るので天井にあれこれ取り付けると部屋が狭く感じてしまう。ごちゃついた感じも否めない。

天井付のスポットライトに限らずフロアスタンドなど多くの局部照明は、天井に1つ取り付けだけのシーリングライトと違い場所を取る。局所的な明かりなので、作業や時間帯によっては全般照明が望ましいケースもあるのだ。

 

 

プランB

シーリングライトはさめざめしい印象があるし、かといって局部照明は狭いぼくの部屋には足枷になる。
結論として、スポットライトを導入するというプランAを諦め、ある程度の明るさを諦めて、邪魔にならない程度の明るさの小さな照明を導入することにした。プランBである。

導入したのはLEDのキャンドルライトだ。

薄く風合いある手仕事の跡が残るボデガのグラスをキャンドルホルダーにして、本棚の上に置く。

元々シーリングライトとデスクライトを照明として使っていたのを、デスクライトとキャンドルライトのみにした。

薄暗い気がしなくもないが、照明を置ける場所が本棚ぐらいしかなく、視線の高さに明るい照明を置いてしまうとグレア(不快感や見えづらさを生じさせる眩しさ)が目に痛い。
それに暗くても勝手知ったる自室でどこに何があるかは把握しているし、デスクライトがあるので読書や勉強も難なくこなせる。

キャンドルライトを最上段に置いたのは、部屋に入った瞬間、視線がスッと対角線上の高い位置に抜けて部屋が広く見えるという効果を狙った為だ。

 

 

さいごに

日本の住宅は明るい。欧米でも日本でも古くはランプや行燈、自然の明かりなど局所々々を照らす明かりを用いていた。しかし日本は電力の普及や敗戦後の経済成長の中で部屋全体を煌々と照らすシーリングライトなどの全般照明が住まいの明かりを席巻していった。
もちろん日本の狭い住宅では場所を取らないシーリングライトは重宝するし、明るい方が便利な場面も多い。
だが抑えた明かりは安らぎを与える。また谷崎潤一郎氏の著書『陰翳礼讃』にある通り、日本文化は翳りに美を見出していた。
もはや戦後ではない。通り一辺倒なただ明るいだけの照明から脱却し、それぞれ個人が望みに合わせた、それぞれの照明を追い求めても良いのではないだろうか。